お気持ちの文章を書くというのは難しいことです。というのも、感情を言語化し一つの作品にまとめ上げる必要があるからです。ただ感情の吐露だけでも文章として成り立ちますが、中身があり筋の通って読まれる文章でないと読者はリアクションをしてくれません。お気持ちを書く側にとっては読者のリアクションほど大切なものはありませんから。
今回はテーマを決めてお気持ちを書く練習をしてみたいと思います。
Ⅰ骨格の作成
❶テーマを決める
まずはテーマを決めましょう。VRChatあるあるで「お砂糖が嫌」というテーマにしたいと思います。なお、執筆者はお砂糖が悪であるという思想は持ち合わせていません。
さて、曖昧なテーマですので、少し範囲を狭めてみましょう。
- お砂糖という文化が嫌だ
- お砂糖相手が嫌だ
- 周りの人がお砂糖になっている状態・状況が嫌だ
どれを選んでもよいのですが、今回は「周りの人がお砂糖になっている状態・状況が嫌だ」にしましょう。
❷結論を仮に決める
次に結論を仮決定しましょう。といっても、結論は出ているのです。「嫌」なのです。ですから、どう嫌だったかという記述を最後に書いてまとめるとよいのです。
この部分は記事のメインになります。ですから、まずは仮置きにしておいて、思考が深まってきた後から変更するのがよいでしょう。
そしてメインのことがスラスラかけるわけないので、思い当たることを羅列するのが、まずはよいでしょう。
- 男同士なのに
- 自分までそういう目で見られる
- 気を遣わなきゃいけない
これくらいにしておきましょう。
❸根拠を集める
例えば「男同士なのに」に注目しましょう。なお、同性同士が恋愛することの是非を問うわけではないことには注意しましょう。
お気持ちというのは個人の感情です。ですから、個人のエピソードがもっとも強い根拠になるでしょう。実体験をまとめるとよいのです。
私は初心者時代から仲のよかった数人のフレンドがいる。VRCにいるときはYouTubeの動画を一緒に観ている。VRCにいないときでも、いつもディスコードでApexをしたり雀魂をしている。学生時代の部室のような感覚。一緒にとくに意味もない時間を過ごしていた。
その集団のなかでお砂糖ができた。両方中身は男だ。Twitterでは「いつも通り接してください」なんて言っておいてるが、無理だ。あ……そういうことする人だったんだとも思う。なんかいままでの空気に戻れない感じが嫌。
それに、はっきりオレンジステータス・プラべの率が上がった。ディスコードもいつものサーバーに居ないことが多い。きっと二人だけで通話しているんだろう。
あぁ嫌だな。なに結婚もできない恋愛にマジになっちゃってるの? 二人の間ではいいかもしれないけど、みんなにも迷惑かかってるんだけど。
このエピソードと❷の結論をつなげると、こう言うことができるでしょう。
自身と関係が深い相手が、同性同士のしかもバーチャルな恋愛に真剣になっているさまに嫌悪感を抱いている、ということです。
Ⅰで作った文章
まわりのひとがお砂糖になることに嫌悪感を抱く。
たとえばこうだ。私の所属している界隈は、常時Apexをしたり雀魂をしている学生時代の部室のような関係だ。そのなかでお砂糖ができた。あぁ嫌だな。なに結婚もできない恋愛にマジになっちゃってるのだろうか。
仲良かった人がそんなことをしているなんて思いたくもない。
一段目が序論、二段目が本論、三段目が結論に対応します。
Ⅱアイディアだし、内容の充実
❶箇条書きで書く
Ⅰでもやっていることです。こまったときはいくつか思い当たるものを箇条書きで書いてみるのです。上記記述では曖昧なところをこの方法で補ってみましょう。
- 結婚もできない恋愛
- 同性同士では結婚できない
- ほんとうの恋愛であるかも怪しい
- 結婚が恋愛のゴールであるという思想
- 恋愛にマジになっちゃってる
- なにかを本気で突き詰めるような集団ではなかった
- 没頭している様子に対する距離感
- 自身のイデオロギーに反する行為
- 仲良かった人がそんなことをしているなんて
- 信頼の裏切り
- 自身の知らないサークル内サークルがある可能性
- 周囲から自身も同一化して(お砂糖に興味があると)みられること
❷調べる
先人たちがさまざまな知見を述べています。上記に対して深掘りをしてみるということです。ほかの具体例なんかもでてくるでしょう。
Googleで調べるのが手っ取り早いでしょう。Wikipediaでも結構です。論文検索にはGoogle scholarのほか、CiNiiやJ-stageで調べるのがよいでしょう。
例えば上記の「結婚もできない恋愛」に対してはロマンチック・ラブ・イデオロギーであると考えられます。
- 結婚もできない恋愛
- 同性同士では結婚できない
- ほんとうの恋愛であるかも怪しい
- 結婚が恋愛のゴールであるという思想
- 上記3つとも
ロマンチック・ラブ・イデオロギー
ロマンチック・ラブ・イデオロギーは愛―性―結婚の三位一体を根幹とします。これに反するものはホンモノではないと、そういう思想ですね。例えば、同性同士の恋愛は結婚できませんのでホンモノではないというものです。
❸感情を書く
自身の素直な感情を、振り返ってじっくり記述することも大切です。少しずつ記述していきましょう。
- 恋愛にマジになっちゃってる
- なにかを本気で突き詰めるような集団ではなかった
- 放課後の部室のような、競争から外れた友情をもっていた
- とりあえず繋がっているイツメン
- 没頭している様子に対する距離感
- 切磋琢磨しようという集団ではなかったのに
- 本気な人がいるとその熱量に距離感がある
- 自身のイデオロギーに反する行為
- 自分が全てってわけじゃないけど
- 自分と違う信念を持つ人とは深い関係に慣れないな
自身が語っているかのように筆を進ませるのがポイントです。
Ⅱで作った文章
まわりのひとがお砂糖になることに嫌悪感を抱く。
たとえばこうだ。私の所属している界隈は、常時Apexをしたり雀魂をしている学生時代の部室のような関係だ。そのなかでお砂糖ができた。あぁ嫌だな。なに結婚もできない恋愛にマジになっちゃってるのだろうか。
恋愛というのはそもそも、好きな人ができて、手を繋いだりキスをしたりセックスをしたりして、結婚して、子供を産み、家庭を作る。そういう営みの過程のものだろう。そうでないものは恋愛ごっこだ。ほんものではない。
自分の信念が全てってわけじゃないんだけど。違う価値観を持っているひととは深い仲になれないな。仲良かった人がそんなことをしているなんて、そんな価値観をもっていたなんて思いたくもない。
本文に挿入する際には適当な言葉を添えてください。
Ⅲ校正
❶黙読
校正の基本です。一文一文しっかりよんでください。
❷文を正す
誤字脱字、文法的な誤りがある場合は訂正しましょう。
並列の「たり」
私の所属している界隈は、常時Apexをしたり雀魂をしている学生時代の部室のような関係だ。
下線部は誤った表現です。「たり」は並列を表す助詞です。見たり聞いたり、などと各項目につけるのが原則です。「と」も同様です。
私の所属している界隈は、常時Apexをしたり雀魂をしたりしている学生時代の部室のような関係だ。
「たり」は動詞にしか付きません。ですから、したりしているといった回りくどい表現になります。「たり」に固執せず、ほかの並列表現に代えるとよいでしょう。
私の所属している界隈は、常時Apexや雀魂をしている学生時代の部室のような関係だ。
主述関係が2文にわたる
恋愛というのはそもそも、好きな人ができて、手を繋いだりだりキスをしたりセックスをしたりして、結婚して、子供を産み、家庭を作る。そういう営みの過程のものだろう。
1文目だけを見てしまうと、主語と述語の関係は「恋愛というのは……家庭を作る。」となり、ちょっと意味が通りません。意味上の述語は2文目の下線になります。
ですから「。」を「、」に変えてあげるとよいでしょう。
恋愛というのはそもそも、好きな人ができて、手を繋いだりキスをしたりセックスをしたりして、結婚して、子供を産み、家庭を作る、そういう営みの過程のものだろう。
❸文を読みやすくする
文法的には正しくても、直した方が読みやすい文があります。
用語統一
まわりのひとがお砂糖になることに嫌悪感を抱く。
恋愛というのはそもそも、好きな人ができて、
自分の信念が全てってわけじゃないんだけど。違う価値観を持っているひととは深い仲になれないな。仲良かった人がそんなことをしているなんて、そんな価値観をもっていたなんて思いたくもない。
「ひと」と「人」が混在しています。特別使い分けしていない場合、どちらか一方にするのがよいでしょう。
まわりの人がお砂糖になることに嫌悪感を抱く。
恋愛というのはそもそも、好きな人ができて、
自分の信念が全てってわけじゃないんだけど。違う価値観を持っている人とは深い仲になれないな。仲良かった人がそんなことをしているなんて、そんな価値観をもっていたなんて思いたくもない。
常用外漢字をひらく
恋愛というのはそもそも、好きな人ができて、手を繋いだりだりキスをしたりセックスをしたりして、結婚して、子供を産み、家庭を作る、そういう営みの過程のものだろう。
自分の信念が全てってわけじゃないんだけど。違う価値観を持っている人とは深い仲になれないな。
常用漢字表の読みに該当しない漢字表記をひらがなにしましょう。このひらがなにする作業をひらくといいます。「繋ぐ」→「つなぐ」、「全て」→「すべて」。
恋愛というのはそもそも、好きな人ができて、手をつないだりだりキスをしたりセックスをしたりして、結婚して、子供を産み、家庭を作る、そういう営みの過程のものだろう。
自分の信念がすべてってわけじゃないんだけど。違う価値観を持っている人とは深い仲になれないな。
Ⅲで作った文章
まわりの人がお砂糖になることに嫌悪感を抱く。
たとえばこうだ。私の所属している界隈は、常時Apexや雀魂をしている学生時代の部室のような関係だ。そのなかでお砂糖ができた。あぁ嫌だな。なに結婚もできない恋愛にマジになっちゃってるのだろうか。
恋愛というのはそもそも、好きな人ができて、手をつないだりだりキスをしたりセックスをしたりして、結婚して、子供を産み、家庭を作る、そういう営みの過程のものだろう。そうでないものは恋愛ごっこだ。ほんものではない。
自分の信念がすべてってわけじゃないんだけど。違う価値観を持っている人とは深い仲になれないな。仲良かった人がそんなことをしているなんて、そんな価値観をもっていたなんて思いたくもない。
校正後、再度黙読するのがよいでしょう。
これで一連のながれは終了です。あとは、Ⅰ~Ⅲをくりかえすのみです。
気持ちを言語化して文章に落とし込む作業のながれを記述してみました。これは私のなかでの書き方ですので、ほかの人はその書き方があると思います。
実際、文章を書いているときはこれらを同時に処理していることが多いでしょう。例えば用語統一などは気になると初めから直したくなります。ただ、もっとも執筆のペースが速いのは、Ⅰ~Ⅲをそれぞれ分けて行うことだとも実感しています。
まだまだ文章表現は勉強中です。以後もっと本を読み理解を深めていこうと思います。ですが、ひとまずここまでのメソッドをまとめておこうと思い、練習として執筆いたしました。