J-pop DJのはじめ方

VRChat内でJ-popをメインにDJをしています。
経験も知識も浅いのですが、私なりにDJをしている方法を記載していきたいと思います。これを見た人がJ-pop DJをはじめて、もっと和モノイベントが増えてくれればよいなと思います。

 

 

 


つなぎ

J-popは一般に次のような構成になっています。

    1番 2番    
セクション イントロ Aメロ Bメロ サビ 間奏 Aメロ Bメロ サビ 間奏 Cメロ サビ アウトロ

 

イントロ・間奏・アウトロがボーカルの入っていないことの多いセクションです。ここが繋ぎどころです。私の場合は、1番の間奏に次の曲のイントロを重ねます。

 
デッキ1   1番        
セクション イントロ Aメロ Bメロ サビ 間奏        
デッキ2           1番
セクション         イントロ Aメロ Bメロ サビ 間奏

 

間奏とイントロの重ね
例 STAY TUNE/Suchmos → Break Free/Nulbarich

 

つなぎ方は以下のとおりです。フェードインとちょっと速めのフェードアウトです。

BPMを合わせた後、

①デッキ2のlowを切り、デッキ2の縦フェーダーを徐々に上げる
②デッキ2のlowを徐々に上げていき、同時にデッキ1のlowを切っていく
③デッキ1にbeat fxのlow cut echoを少し(10時くらいの角度)かける
④デッキ1の縦フェーダーを切る

 

基本的に間奏やイントロといったボーカルのないセクションをつなぐため、低音にさえ気を付けていればいいかなと思い多くはlowだけでやっています。丁寧にやりたい場合はmidやhiもいじります。

 

フェーダーの動きに関しては、以下のサイトが丁寧に書かれてあり、参考にしていました。

dogal-blog.com

 

YouTubeで手元の見える動画はたくさんあるので、それを参考にしています。

アニソンmix No.2 手元公開【お宅DJ】 - YouTube

この動画なんかはlowと縦フェーダーが中心になっています。

 

 

low cut echoはお好みで、なくてもよいです。あった方が好きな場合が多いため、おまじないとして書いておきます。

 

low cut echo
例 ELECTRIC SUMMER/Base Ball Bearテレキャスター・ストライプ (全知全能 ver.)/ポルカドットスティングレイ

low cut echoなし

low cut echoあり

 

テレキャスター・ストライプはテレレテレレテレレテレレと始まりますね? これは印象的なスタートなので、フェードインなどして崩さないように、フルボリュームでいきなり流すようにします。対して、今かかっているELECTRIC SUMMERは速めのフェードアウトをしていきます。ラブホテル/クリープハイプの「夏のせい」なんかも似たように印象的なスタートですね。

ROCK以外でも『愛しい対象の護り方』カンデコ/茶太のはじめのジャーーンという感じはいかしたい要素です。ほかにもジャーーンはいろいろあると思います。

 

 

しばしば1番の間奏がなく1番のサビの後にすぐ2番のAメロがくる場合もあります。

    1番 2番    
セクション イントロ Aメロ Bメロ サビ 間奏 Aメロ Bメロ サビ 間奏 Cメロ サビ アウトロ

そういったときは

・カットイン
・low cut echoで無理やりつなぐ
・lowだけでなくmidも操作する
・2番の間奏までかける
・2番から流す
・途中でラスサビに飛ばす
・使わない

といった対処をします。

 

low cut echoで無理やりつなぐ
例 「あの娘は誰?」とか言わせたい/KIRINJI → 金曜日のヴィーナス/流線形 & 一十三十一 Feat. 堀込泰行

サビの途中から次の曲のイントロを入れています。違和感のないように雰囲気の似ている曲を選びましょう。

前の曲は何もしないと次の歌詞が始まってしまいます。ですから、low cut echoで無理やり伸ばし、「言われたよ たよ たよ たよ……」とechoをかけてます。

 

ちなみにKIRINJI(堀込高樹)と堀込泰行の兄弟つなぎなので、ボーカルの質感も似ており違和感が少なくつなげたと思います。

 

 

ボーカルのないセクションでも重ねてみるとうるさくなってしまうことがあります。そういった場合は、デッキ2の曲を入れるタイミングを遅らせ、できるだけ重なる時間を短くします。 

しかし、つなぐ時間が短くなって細かなEQの操作が難しいのが欠点です。その場合は、filterをつかってお茶を濁します。

 

例 ねぇ/Perfumeチョコレイト・ディスコ/Perfume

EQを操作(low・mid)した場合

filter(high pass)を使った場合

 

あまり違いはないと思います。ツマミ2つの操作からツマミ1つの操作になっただけでも余裕は違います。

また、この曲でもつなぎの時間は十分にある方です。アニソンなどもっと短い時間でつながなければいけないときにfilterは重宝します。

 

以前ニコニコのブロマガに上がっていたものを参考にしました。
同じ著者さんがnoteでも書いていらっしゃいますので、そちらも参考にしてください。

note.com

 

 

Cue打ちは、以上のことが操作しやすいように次の箇所に打ちます。

・曲を切り終わるタイミング:間奏のおわり
・重ね始めるタイミング:イントロのあたま

重ねる時間は私は8小節分としています。これくらいあれば慌てててもなんとかなるかなと思っているためです。

 

 

以上がベーシックなつなぎ方でした。もっとほかのつなぎ方は後述します。

 

 


セットリスト

ほかのジャンルでも、盛り上げや落ち着きの波ができるように作っている人が多いと思います。J-popでは音楽自体のもつ盛り上がり性(BPMや音圧など)のほかに知名度も盛り上がりに関与します。表にすると以下のようになるでしょう。こういったことを考えながら選曲していきます。

 

    音学的な要素
   
知名度 メジャー アンセム
マイナー ニッチ

 

また、選曲は3~4曲をひとつのカタマリとして、できるかぎりカタマリ内ではテーマをそろえ、次のカタマリに移行するときに大きく違う雰囲気へ変えるようにします。

以下、実際のセットリストを例に、どうやって作っていくかを述べていきたいと思います。

 

セットリストの例

GOTANIST でDJプレイしたものです。

https://x.com/Shikimi_t/status/1726168720547230143?s=20

 

 

私は2番手で、1番手のミカゼさんがエレクトロスイングかける予定でした。エレクトロスイングはJAZZの色が濃い音楽ですので、私もJAZZっぽい曲を選曲しました。

 

 

上記セットリストでは①~④でひとカタマリです。

Go! Go! Maniac/ALL THAT JAZZ
残酷な天使のテーゼ/ALL THAT JAZZ
③The Sweetest Time/中塚武
④愛の泉/orange pekoe

今回のセットリストはいきなりアゲていくようです。

このなかで①、②は定番曲のJAZZアレンジです。はじめにかけた①Go! Go! Maniac/ALL THAT JAZZはインスト(ボーカルのない曲)です。1番手のミカゼさんもインストの曲で終わるだろうと思ったため、それに合わせてこちらを先にかけました。

①~④はすべてJAZZの曲調で、BPMも同じくらい。対して知名度は違い③④は比較的マイナーなため、そこで盛り上げの波を作ろうとしているのです。

 

 

⑤土曜日の恋人/NONA REEVES
⑥ラブリー/大橋トリオ
⑦アポロ/モノンクル
丸ノ内サディスティック/宇多田ヒカル with 小袋成彬

このカタマリは、先ほどよりもBPMを思いっきり下げて落ち着きを表現しています。先ほどのカタマリは124前後、こちらのカタマリは90前後です。

BPM以外のところは統一感を崩さないようにしています。このカタマリ内の曲はすべて有名なJ-popのカバー曲で、知名度に差はありません。曲調もJAZZっぽさがあります。

 

 

⑨渋谷で5時/鈴木雅之 & 菊池桃子
⑩原宿午後6時/フレンズ
⑪東京は夜の七時 (feat. Night Tempo)/野宮真貴 & Night Tempo

いったん落ち着かせたためまた盛り上げの波をもってこようと思います。そのため、BPMが120台と先ほどより早めの曲群をもってきました。

 

このカタマリ内では文脈でつなぎをしています。前のカタマリの最後が「丸ノ内」サディスティックなので東京の地名でつなぎました。

このカタマリ内では5時6時7時と時間が経過していくようにつないでいます。つなぎやすいように⑪は原曲ではなく、BPMの近いNight Tempoのものを使用しました。

また、これらは渋谷系というジャンルでもつながっているため文脈的親和性の強いつなぎでした。

音楽的には少しJAZZさは薄くなり、POPSよりになっています。

 

 

⑫接吻/ORIGINAL LOVE
⑬ひかるまち/CRCK/LCKS
⑭はなれ ばなれ/クラムボン
⑮エイリアンセックスフレンド/FINAL SPANK HAPPY
⑯まわれ まわれ/流線形と比屋定篤子

今度はまた落ち着きを演出したいためにBPM90台を選曲しています。知名度は接吻以外は、今までの曲と比較してないほうだと思います。音楽的・知名度的にも落ち着きのあるカタマリとなりました。

 

次のカタマリで盛り上げるための布石でもあります。
実際、このあとはBPMも少し上がり知名度も高い曲が続いています。

 

個人的にやりたかった東京事変の曲を最後の盛り上げにして、赤い公園でしめています。

 

……と、このような感じにセットリストを組んでいます。

 

BPMや勢いや雰囲気など音楽的な要素、そして知名度という要素の両者で、アゲサゲの波を作った例でした。

 

セットリストの作り方は以下の記事を参考にしています。

note.com

 

 


Dig

 

Digり方は大きく2つあります。

 

①ほかの人のDJを参考にする

参考にしているDJを挙げます

www.twitch.tv

(filterでつなぐことを解説してくれた人)

 

www.youtube.com

 

ほかにもYouTubeでDJを検索したり、VRChatのDJイベントで気になった人のmixを聞いたりしています。

 

Spotifyでセットリストを作ってみる(こっちがメイン)

絶対に入れたい曲やテーマを決め、Spotifyのおすすめ、プレイリスト、radioで気になった曲をどんどん入れていきます。

 

ざっとしたプレイリストができたら、セットリストにするならどういう順番にするか考えながら、新しく別のプレイリストを作ります。

曲を聞きこみしながら河川敷を走ります。少し痩せます。

 

そこで選んだ曲を含むアルバムを手に入れ、一緒に入っている曲も聞きます。

 

これを繰り返します。

 

 

ほかにも個人ブログやタワレコオンラインをみることが多いです。
とくに、文脈的なつなぎをする場合は個人ブログやTwitterが役に立ちます。

 

 


ほかのつなぎ方

 

どうしてもBPMの違う曲をつなぎたいだとか、雰囲気の違う曲をつなぎたいだとか、つなぎかたの幅を広げたいとかベーシックなつなぎかたで満足できないことがあります。

 

例えば、ジャンルは少し違いますが、つなぎのテクニックは以下の動画を参考にしてます。使えるところがあればそれをJ-popにも応用します。

プロが教える!HOUSE / EDM / TECHNO で使える DJ MIX 応用テクニック 5選 with MIXFUN! (DDJ-FLX4対応!) - YouTube

プロが教える!HIPHOP / R&B で使える DJ MIX 応用テクニック 5選 with MIXFUN! (DDJ-FLX4対応!) - YouTube

【アニソンDJ教則動画】適した曲は?カットイン基本編! - YouTube

 

 

私の例も紹介します。

 

言葉・ループでつなぐ

例 ユリイカ/サカナクション爽健美茶のラップ/chelmico

ROCKとHIP HOPをつなげる機会がありました。曲調が変わるため、なにかでつなぎたいなと思って「ドクダミ」のループでつなぎました。こういう言葉でつなぐのもひとつの手段としてもっておきたいです。普段から歌詞に意識を向けておきましょう。

 

 

クラッチでつなぐ

例 350ml Galaxy/Lucky Kilimanjaro → 白日/King Gnu

BPMが123と93で大きく違います。
白日にはサビ前にスクラッチ音が入ります。ここをHot cueで再生してリズムを作ってつないでいます。実際にスクラッチしなくても、スクラッチ音のある曲を選べばなんとかなります。

ちなみに350ml Galaxyはお酒の歌で、実際のイベントではマイクパフォーマンスで乾杯を煽っています。その後に有名で比較的スローテンポな白日が流れれば、乾杯を邪魔せずかつ盛り上がれると思ったため、この並びにしました。

 

 

ボーカルとボーカルを重ねる

例 BOY/daoko → Ututu/daoko

ボーカルとコーラスを重ねる

例 すいみんやく/pinoko → Fog/daoko

イントロ・間奏など音の少ないセクションがみあたらない場合は、思いっきりボーカルとボーカル・コーラスっぽい部分を重ねてみます。もちろん、違和感が大きくならないように同じアーティストや曲調・声質の似たアーティストにしましょう。

 

 

ドラムのダダダダでつなぐ

例 WHERE?/夜の本気ダンス → シャングリラ/チャットモンチー

ちゃんとした用語がわからないのですけど、ダダダダはつなぎやすいです。BPM90(180)から129に変わっているので大幅な切り替わりですけれど、そこまで違和感なくつなげられます。

 

 

ほかには、バックスピンやちゃんとジョグを動かしたスクラッチを伴ったつなぎも取り入れています。

 


おわりに

私は独学で、主にアニソンDJを参考にJ-pop DJをしています。ほかの畑の人から見たら違うつなぎ方かもしれません。その点、ご留意ください。

 

J-popはじめ歌モノはそこまで難しくなく、つなげられるポイントが少なく制限が多いです。よく言えば、悩むことは少なく、ワンパターンになるように感じます。というかJ-popならフルでかけてもそんなに悪くないとさえ思います。

 

むしろ、つなぎ方というよりもセットリストを組んだり、Digったりする方に重要性の軸があり個性を発揮できるように思えます。そのため、DJの趣味志向が色濃く出て聞いていて楽しいのです。

 

既知の曲からはじめられる懐メロDJなんかは、聞き込みは既にしているし、フロアの盛り上がりも予想しやすいです。意外とオシャレな曲も多いですよ。昭和歌謡をやってこそとまでは言いません、まずは00年代POPSをやってみませんか?

 

基本的なことしか記述していないかもしれませんが、これを見てJ-popをやるひとが増えてくれればうれしい限りです。