フェノールはベンゼン環に-OH基がついたものです。
-OHがついたものはほかにもアルコールやカルボン酸があります。
この中で、カルボン酸・フェノールは酸性を示して、アルコールは中性であるといいます。カルボン酸はともかく、フェノールが酸性を示すのはいったいなぜでしょうか。
wikiのこたえ
wikipediaには以下のように書いてあります。
芳香環の共鳴効果によって共役塩基のフェノキシドイオン(またはフェノラートイオン);C6H5O-が安定化されるため、同じくヒドロキシ基を持つアルコール類よりも5桁以上高い酸解離定数 (pKa = 9.95) を示す。
ですが、どうやらこれだけでは説明には不足しているというのです。
Siggel先生のこたえ
M. S. Siggel, et al(1986)によるとフェノキシドとカルボキシレート・アルコキシドの安定性には差がないといいます。
対して違いがあったのは、-O-HのHが+性を帯びていたということです。
つまり、一般的にいわれている「H+が外れたイオンの状態が安定だったら酸性が強い」とは逆で「H+が外れやすかったら酸性が強い」のです。
Siggel先生の考え
ここでカルボン酸とフェノールにはあって、アルコールにはないものを考えます。
カルボン酸→カルボキシレートはC=O二重結合が、
フェノール→フェノキシドにはC=C二重結合が、
対してアルコール→は単結合ですね。
さて、二重結合ということはsp2混成軌道であることが関係していそうです。
sp3混成軌道よりもsp2混成軌道のほうがs性が大きく、つまりは原子核からの距離が近く、電子を引き付ける力、電気陰性度が高いのでした。これが答えになりそうですね。
カルボン酸・フェノールのO-H間の電子は、O側により傾いていて、H+が外れやすい環境にあるといえます。
MOで考えてみる
具体的に酸の解離を考えます。つまりは水溶液中でイオンになるわけですね。
-O-HのH+が外れて、-O⊖になるのです。これは、水H2Oによる求核的な反応と考えてよいでしょう。
求電子剤は同じH2Oなので、HOMOは同一条件。求核剤のO-HにおけるHのLUMOを求めれば反応性がわかりそうです。山口達明先生の本にデータがあります。
酢酸は0.267、フェノールは0.336、アルコール(t-ブタノール)は0.076と大きく異なります。値が大きい方が求核反応を受けやすいのでした。
このようにMO理論からも補足できました。
学びなおしまとめ
フェノールはなぜ酸性を示すの?
よくある回答:H+が外れたイオンであるフェノキシドイオンが安定だから
今回学びなおしたこと:H+が外れやすいから
補足
アルコールが単結合なのは、アルコールの根元の炭素にC=C二重結合があるビニルアルコールはケト型に変わってしまうのでした(ケト-エノール互変異性)。