会話において「主導権」ってあるよなあと思うのです。
それについてのブログとなります。
会話の主導権
会話による情報伝達の主導権維持には4つの方法があるといいます(李 麗燕)。
- 持続表示……「それでね」「つまり」などの接続
- 注目要求……「ほら」「あのね」、語尾の延長「~さー、なんだよねー」、同一語句の反復、上昇音調
- 時間稼ぎ……「えー」「あのー」「んー」
- 他者無視
これは一時的な情報伝達における、発言としての行動ですので、みながまんべんなく行っている行動だと思います。
ですが、私はこれにパーソナリティやキャラによって志向や偏りがあるのではないか、と思うのです。
つまり、日常的に行っている会話、多人数で行う他愛ない会話に関して。主導権維持の志向性、クセがあるのではないか。そのクセはその人のキャラと関係しているのではないか、ということです。
ここでいう他愛ない会話は、情報の精度や新規性などが重要なのではなく、会話することそれ自体が重要なのです。そのためには、相手に伝達した情報の理解に要する力が少ない方が好まれます。つまり、簡単な話、共通の話題、内輪ネタ、予定調和な展開などです。
そういった低刺激な情報の主導権をどうやって握っているのでしょうか。
もちろん、上記の4つの方法もあるでしょう。ですが、もう少し大きな枠で、「話の流れ」のようなものの主導権について考えたいと思います。そのためにまず、会話そのものを俯瞰してみましょう。
会話の役割
会話は2者と3者以上で役割や性質が大きく異なるといいます。
2者間の会話における役割は次の2つです。
- 話し手
- 聞き手
対して、3者以上の会話における役割は次の3つです(Clark & Carlsonの分類)。
- 話し手
- 受信者……次の話し手になる聞き手
- 傍参与者……話し手にならない聞き手
「話の流れ」を考えると、それを握るひとつの要素は発言権奪取にあるでしょう。そもそも話し手でなければ情報伝達の主導権維持はできませんからね。発言権奪取は話し手になることです。つまり、話し続けること、もしくは次の話し手になる「受信者」になることでしょう。
この分類は発言権、カラオケでいうマイクを持っている人に注目した分類方法です。カラオケは順番に歌うというルールが無意識的に働きます。しかし、会話にはそれがありません。コミュニケーションスキルやパーソナリティ、キャラが発言権取得に関与しているといわれています。
どのように関与しているかは、詳細は不明のところが多いです。そこで、会話における動作に、とくに積極的か否かについて着目してみることで、キャラとの関係性を考えてみたいと思います。
話す・聞くという動作
話す・聞くという動作はそれぞれ性質の異なるものです。話すというのは能動的な動きで、対して聞くというのは受動的な動きです。積極性を考えると次の3つに分けられるのではないでしょうか。
- 積極的に話す……積極的な能動性、話し手であり続ける
- 積極的に聞く……積極的な受動性、聞き手であり続ける
- 消極的に会話する……その他
会話におけるスタンスと言い換えてもいいでしょう。
ところで、聞き手は受信者と傍参与者に分けられました。つまり、積極的に聞くことは細分化できます。
- 積極的に受信者になる……次の話し手になろうとする
- 積極的に傍参与者になる……次の話し手にならないようにする
このなかで積極的な受信者が会話の転換点になることは容易に想像できると思います。会話をキャッチボールでいうのなら、ボールを受け取って投げ返すことが上手な人です。
積極的受信者のキャラ
話し手からのバトンを受け取ったという表明を表すために、会話を始めるためにとる行動は情報伝達の主導権維持に共通するように感じます。とくに持続表示と注目要求です。
- 持続表示……「それは……」「なるほど……」
- 注目要求……「あー」「はいはい」
こういうバトンを受け取りましたというアピールはみなが行うことです(アピールという点でおおよそ注目要求に入るのですが)。
ここで、冒頭に書いた私の仮説が出てくるのです。こういったアピールの志向性はパーソナリティやキャラによるものではないか、ということです。
- 持続表示……話題の内容に主軸があるようにふるまう
- 注目要求……話者に主軸があるようにふるまう
パーソナリティよりもキャラに注目してみます。パーソナリティは内なるものですが、キャラは世間的な同意を求めるもので、他者との関係上成り立つものです。
持続表示キャラと注目要求キャラがあるとして考えると、スッキリするように思えます。以下それがあると仮定しての話です。
持続表示キャラは「話題の内容に主軸があるようにふるまう」ように話し手に思わせる効果があります。同じく、注目要求キャラは「話者に主軸があるようにふるまう」ように話し手に思わせる効果があります。
これらはキャラですので、話者間の共通認識になります。ですから、話し手が「こういうこと言ってほしいんだな」だとか、もしくは無意識に抑え込まれ「あまり考えずに話してた」だとかいう場合は、聞き手のキャラを理解して、聞き手が受け取りやすいように話を振っているということでしょう。
「話の流れ」の主導権
少しまとめてみましょう。
「話の流れ」のようなものの主導権について考えているのでした。
主導権を得るひとつの方法は、話し手になること、発言権奪取でした。
発言権の取得には、話し手でありつづけること、そして次の話し手である受信者になること、この2つの方法があるのでした。
積極的な話し手になる人はおしゃべりな人です。
積極的な受信者になるのは2つあって、ひとつは話の内容を展開させてつなげるパターン(持続表示キャラ)。もうひとつは、とりあえず話し手になるパターン(注目要求キャラ)。
これらパターンはパーソナリティというよりもキャラとして定着・共通認識されているものだと私は考えるのです。
とくに他愛ない会話を考えると、内容の重要性はありませんから注目要求キャラ的な志向がその会話を円滑にさせると考えられます。
いじられキャラ
ここまで私もまとまりきっていないことを書いていたのですが、これがいいたかったのです。
注目要求キャラとはいじられキャラである。いじられ内容は既知のもので内容の新規性はない。けれども、他愛ない会話、会話していること自体が重要な場面ではとくに問題視されない。
そのキャラとして定着・共通認識されているからこそ、話し手も聞き手も何を言えばどういった反応をしてくれるのか/すればよいのか、ある程度理解できる。だから会話のパスを出しやすい。円滑な会話ができる。
いじられキャラであることは「おしゃべりな人」という属性を避け、積極的な受信者として会話の主導権を握ることである。
……ということです。
わたしはなかなか難しいなと思って、そこまで至れないのです。
むしろ、私は積極的な持続表示キャラとしてあり続けたいなという理想があります。
参考