転生の可能性

以前のブログで、転生可能性が自己愛のプログレッサーであるのではないか、と書いたことがあります。

 

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長い記事だったので、あらためてまとめてみます。

 

 

ひとつは自己愛

ここでいう自己愛とはコフートの話でした。自信や自己評価といったものと言い換えることができるものでした。これは鏡映自己対象、理想化自己対象、双子自己対象によって満たすことができるという論でした。

悩めるわれわれは、この自己愛が満たされてない状態にあるのではないか? という仮説です。

 

 

ふたつめは小集団

固定メンツというサークル、内輪という世間のことです。界隈といってもいいでしょう。そこではスクールカーストに似た閉鎖的な空気感があるのではないでしょうか。もしそうであれば、維持していたキャラが崩れると評価がガタ落ちして、界隈で認められなくなるのではないか? という仮説です。

 

 

自己愛と小集団の仮説から

小集団の構成員を自己対象にして自己愛を満たしているのならば、質の低い自己愛になってしまうのではないか、ということが考えられます。

言い換えると、固定メンツの内輪ノリだけでは、褒められる・尊敬する内容や相手は限られてしまって、そこでは十分に満たしきれていないものがあるのではないか? 真の個性ではなく抑えられた「キャラ」として演じるだけでは十分な自己愛が満たせないのではないか? という問題をあげています。

 

 

それに対して界隈を移動することがひとつの対応策だろうと提案しています。

 

 

結びを格好つけて書いてしまったのですが、読みにくいかもしれないので、補足です。

リアルとバーチャルの連続性、むしろスクールカーストなどリアルでのイニシエーターが根にあり、

VRChatでわれわれが過ごしている界隈の世間は、とくに空気であったりイデオロギーであったり、リアルと地続きです。

例えば、学生時代のスクールカーストのようなキャラを作り合う空気の読み合う関係が今でも続いているのではないでしょうか。

イニシエーターとは腫瘍の分野でいうDNA損傷物質で、いわゆる起爆剤です。

 

バーチャルがそのプロモーターとして役割を果たしてしまっていると、一連の流れを記述し終えたときに感じました。

VRChatという2.5次元はよい意味でも悪い意味でもデフォルメされるものです。

バーチャルだから今までになかった自由な人間関係なのだ、というわけではなく、むしろスクールカーストな空気感がデフォルメされ、強化されているのではないでしょうか。

プロモーターとは、腫瘍の分野でいう作用促進剤です。いわゆるブースターです。

 

そこでは転生可能な流動性が自己愛のプログレッサーとなるのだ

界隈を変える仕組みとしての転生。または、「転生をしてもいいんだ」という、転生しない方が偉いという先入観を捨てること。もっというと、ちょっとくらい失敗してもいいんだということ、キャラにあっていてもしんどいことはしなくてもいいこと、そういったことの再確認が自己愛をより満たせる方向に進むのではないでしょうか。

プログレッサーとは腫瘍の分野でいう遺伝子変異の増加剤です。よい方向へ転換することを願って比喩としました。

 

 

さて、ここまでが以前の記事で書いた内容です。

 

 

文化系トークラジオLifeで、SNSについて以下の議題があがっていました。

そんなことを考えていたときに出会ったのが、ボリス・グロイスの『ケアの哲学』(河村彩訳、2023年)でした。この本では、たとえばSNSの投稿のような「自分に関するデータ」のことを「象徴的身体」と呼び、生身の身体の延長にあるものと捉えています。そしてもうひとつ重要な概念が「セルフケア」です。これは、国家の福祉に代表される、他者からもたらされるものとしての「ケア」に対して、自分が自分のことを調整していく、「自己への配慮」(フーコー)に近い概念です。

 

この本では、数々の歴史的な哲学者の議論を振り返りながら、「ケア」と「セルフケア」の対比が語られるのですが、僕はこの本から、「いまやSNSで情報を発信したり、あるいは受信したり、いいねしたりすることは、セルフケアの一部になっているのではないか」

 

これに一部影響されて書いた記事が以下のものです。

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ここで、

VRChatはSNSとしての不十分さがあるのです。そして他のSNSによって補完されている面が多いのです。

といって書いたとおり。自分に関するデータは蓄積されないので、見かけ上象徴的身体が薄れているのではないか、と思うのです。

 

 

転生することは象徴的身体の損失です。ですがVRChatではそれが薄いのならば、転生は意外と簡単にできてしまうのではないかと思うのです。

もちろん、システム的な意味ではなく、気持ちの面です。

 

サブ垢や裏垢をもつことにうしろめたい気持ちを抱く人も多いと思います。ですが、VRChatでは意外と自身の中で受け入れられるのではないでしょうか。

 

 

さて、そうなると次の課題がみえてくると思います。新たな界隈への加入ですね。友達作りといってもいいでしょう。自分の居心地のよいイツメンを探すことです。

このことについてはまた考えるとして、ひとまずのまとめを。

 

 

転生は悪いことではないし、転生は意外と簡単に受け入れられるものです。……とは言い切れませんが、少なくともその可能性はあるのではないでしょうか。

ですから、今のアカウントで「失敗しちゃったな」と思ったとき、いざとなったら転生しちゃえばいいんだ、と思うことで少しは気が楽になるのではないでしょうか。

 

 

以前のブログの焼き増しですが、あらためて。