instanceカースト

鈴木翔『教室内カースト』(光文社,2012)を読みました。

教室内カースト



 

 

これは2012年の書籍です。私が学生時代を過ごした時期と重なっており、私の意識に近いものが説明されているなと感じます。

つまり、今でもスクールカーストにとらわれているところがあると思うのです。

 

そこで、VRChatをはじめとしたVRSNSで感じる生きづらさはこういった側面があるのではないか。と仮説をたててみたいと思います。

本書を抜粋して、置き換えてみたいと思います。
そこにヒヤっとするところがあれば、カーストの意識を私が今でも持ってしまっているということです。

 

ここで示したいことは、カーストがあるかないかではありません。
スクールカースト存在下で育ってきた私が、そういった意識を持っているかどうかです。

 

 

 

・ギャルが「上」で、オタクは「下」(p96)

・力関係を把握しやすいように名づけられている(p100)

「ギャル」「普通」「地味」、「イケてるグループ」「イケてないグループ」のように、クラス内のグループに何かしらの名前を付けて力関係を把握している

 

↳「○○勢」のようなクラスタリングは行われていると思います。またキャラクターのロールプレイを重視している方もいるので、一概にヤンキーやギャルが上位ではないと思います。(中身ではなくキャラクターだからという意味もあると思います)
くわえて、一般にオタク文化は土台としてあるように感じます。

オタク文化とは離れた「メタバース」という言葉やマネタイズを感じると距離を置くことがあり、私の周りでも同様の空気を感じます。

 

一般VRSNS層とマネタイズを感じる層とでは、グループは横並びの状態であると感じます。どちらが上位でどちらが下位というわけではないと思います。宮台真司のいう「島宇宙」の状態に近いと思います。

 

つまり、ここには格差はないだろうと、私が思っていると考えられます。

 

 

ですが、過ごしていて楽しいことだけではありません。
その生きづらさがどこから来るのか。マネタイズ層ではないのならばどこからでしょうか。

本書の内容を読み進めて答えを見つけたいと思います。

 

 

 

  • 権利と義務

・上がいなければ、下だっていろいろできる(p126)

・上位であるほど、「自分の意見を押し通す」ことができ(p130)

・「クラスの友達の意見に合わせる」ことに関しては、男女ともにそれほどの差は見られません(p131)

・何らかの理由から「自分の意見を押し通す」ことができる生徒が、コミュニケーション能力があるとされてきた(p131)

・「『1軍』の義務として」権利を使わなければ何も進まない(p137)

スクールカーストはコミュニケーション能力によって形成されていると思われていたが、誤りのようである。上位も下位もコミュニケーション能力に違いはない、ただし上位には「意見を押し通す」ことが特徴である。

上位は上位で盛り上げたりすかしたりしなければならない。みんなが黙っているときに仕切らなければならない。人を動かす権力が使える分、誰かがやらないといけないときには上位の人がその義務を果たす。

下位の人は上位の人がいないときにはその役割をすることができる。(相対的に上位の人がやるべきと責任を果たす)

 

↳どうでしょう、コミュニティに所属しているのであればすこしヒヤっとすることがあると思います。

意見を押し通す人に少し嫌な気がするのと同時に、何も意見を言わない人にも嫌悪感を抱きます。私はどちらかというと後者ですが……

上位の印象を持つ人はその人なりに、自分がやらないとほかの人は動かないという使命感があり、それもしんどそうです。

 

 

  • 「上位」の特徴

・にぎやかで、声が大きく、バスで後ろの席を占領する(p146)

・気が強く、仕切り屋(p151)

声が大きかったり、気が強く仕切り屋だったりする。

「イケているグループ」は「最初から人気があ」り、「アピールの仕方がうま」く、先輩たちと仲良くし、「わいわい」楽しくダンスを練習しているのに対して、「イケてないグループ」は、あまり仲良くすることができず、ダンスの踊り方を詳しく聞き出せないので、なかなかダンスが上達せず、練習を楽しくすることができないのです。(p150)

 

↳気が強かったり仕切りたがりだったりする人は上位の印象を受けますね。

また、p150の引用にあるように、「最初から」人気があるように思え、そういった人たちが「わいわい」楽しそうにしている印象を受けます。対して、人に聞きだせないでいる方は下位の印象を受けてしまいます。

 

・異性の評価が高い(p154)

・「めちゃめちゃキャラがおもしろくて、『イケてる女子』がそのキャラを気に入ると」男子の立場は強くなっていく(p156)

・若者文化へのコミットメントが高い――女子は容姿に気を遣う(p159)

かわいい子と付き合っているのは立場が強い。恋愛市場や若者文化へのコミットメントとグループが密接に関係している。

もともと容姿が端麗である生徒が「スクールカースト」の上位グループに所属しているというよりは、むしろ、「努力」というキーワードで語られるように、流行に敏感にアンテナを張り巡らせ、それをキャッチできるような生徒が、「地位」が高いと捉えられています。(p159)

 

↳われわれの言葉に変えると、boothの新商品をチェックして、男ウケのいい可愛くえっちな衣装を着た改変の上手なユーザーが上位の印象を持つということでしょう。

くわえて、そういった上位のユーザーと仲良くしているユーザーは立場が強いだろうという印象がある。これもよく見かけるなと思います。

 

・運動ができるイケメン(p163)

ですから彼女は、「卓球とかバドミントンではいくらできてもダメ」であるとも語っています。(p164)

ラケットを使う球技はモテない、スポーツによっても印象があるらしい。

 

↳DJやダンス、BARやcafeイベントなどさまざまありますが、そのイベントごとで上位かどうかの印象があるかもしれないです。

一応言っておきますが、もちろん、それらの立場に上も下もありません。

 

 

  • 「下位」の特徴

・特徴はない。しいていえば、地味。(p169)

 

↳上位の特徴からはずれた、発言力がなかったり行動力がなかったりする人が下位の印象を受けると思います。

オタクかどうかはここでは関係なく感じます。(みんなオタク趣味を持っているだろうから)

 

 

 

 

以上、地位の差なんてないのにもかかわらずそういったものを感じてしまうことが、私にはあるように思えます。

 

本書には、生徒から見た地位の差は「権力」として解釈され、対して教師から見た地位の差は「能力」として解釈されるようです。

 

私の場合、それがごちゃまぜになり、権力も能力も持っているなと無いはずの印象を受けていることがあります。

 

 

まとめると……

ビジネスでやってそうな層と趣味でやっている層に距離があり、そこに地位や権力の差を感じません。

 

強く厳しめの言葉を使ったり、根拠の薄い自分の考えや他人の評価などを言ったりして、自分の意見を押し通そうとする人に対して、「上位」の権力を感じてしまいます。
また、その人に「発言力」や「コミュニケーション能力」が高いと感じてしまいます。

 

男ウケのするフリフリや露出度の高いえっちな衣装で改変する人に対して、「上位」の権力を感じてしまいます。
また、その人に「魅力」を感じてしまいます。
(これはその通りかもしれませんが……)

 

 

そして、そもそも上下関係を気にする感じ。
他人の評価を気にしたり、自分を下位だと思っていたりする、その思い込みこそが、スクールカーストの影響だと思います。

 

また、「発言力」や「コミュニケーション能力」が高いと感じる人の選択に従っていることが教室内で穏便に暮らす処世術であるため、今でもそういった人たちの意見に流されてしまいます。

これはパターナリズムに他なりません。

 

コミュニティや友人関係・恋人関係で、そういった人を下位の自分でも導いてくれる上位の存在という幻想を抱かないようにしましょう。

それは自分の意見を押し通そうとする自己中心的なムーブだからです。

(もし、それを「許してあげる私」の母性を感じているのならば、それは選択から逃れているだけです)

 

 

 

学校を卒業しても、スクールカーストの影響が価値観を作っているという再確認ができました。

 

この劣等感を、こんどは自分が上位に立つように努力するのではなく、
せっかくコミュニケーションの解剖をしたのですから、価値観を改めるといった行動に移していきたいです。